ネットキャッシュとは?四季報で金持ち企業を探す方法も解説!

ネットキャッシュ、ネットキャッシュ倍率とは?

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ネットキャッシュ、ネットキャッシュ倍率とは?

悩む君
「ネットキャッシュ」という言葉を耳にしました。
株式投資に役立つようですが、詳しいことは知りません。
調べ方や使い方について、投資初心者でも理解できるように説明してほしいです。

このようなご要望にお応えします。

この記事では、割安株投資に役立つ「ネットキャッシュ」および「ネットキャッシュ倍率」について解説します。
さらに記事の後半では、四季報を使って簡単にネットキャッシュとネットキャッシュ倍率を計算する方法も紹介します。

よいすけ
どうも、小口投資家のよいすけと申します。
日本株をはじめ、いろんな投資商品に少額投資しており、株式投資歴は15年以上になります。
投資初心者の方にも理解していただけるよう、丁寧にこの記事を書きました。
バリュー投資に役立つ内容だと思いますので、ぜひ最後までお読みください。

ネットキャッシュとは?

ネットキャッシュの計算式

ネットキャッシュとは、『企業が保有する「現預金」と「1年以内に換金できる有価証券」の合計から、「有利子負債」を差し引いた実質的な手元資金』のことです。

言葉ではわかりにくいので、計算式で表してみます。

ネットキャッシュ=(現預金+有価証券)-有利子負債
※有価証券は1年以内に換金できるものに限る。

いくら手元にお金があったとしても、その大半が他人から借りたお金だとしたら「お金持ち」とは言えないですよね?

なので、借金(有利子負債)を差し引いて実質的な手元資金を算出するわけです。

ちなみに、現預金と1年以内に換金可能な有価証券の合計を「手元流動性」と呼びます。

メモ

Net Cash(ネットキャッシュ)の「Net」は日本語で「正味の…」や「実質の…」という意味です。
ここでは「網」や「インターネット」という意味ではありません。

ネットキャッシュ倍率とは?

ネットキャッシュ倍率の計算式

以下の計算式の通り、ネットキャッシュ倍率とは、「時価総額をネットキャッシュで割って求められる指標」のことです。

ネットキャッシュ倍率 = 時価総額 ÷ ネットキャッシュ

この計算式で求められた数値は、ネットキャッシュに対する時価総額の比率を表しています。

もう少しわかりやすく言うと、「時価総額はネットキャッシュの何倍になっているか」ということ。

この数値が小さい(倍率が低い)ほど、(その企業の規模に対して)ネットキャッシュが豊富にあると言えます

ネットキャッシュ倍率の具体例

一例として、架空の企業である株式会社A商事のネットキャッシュ倍率を計算してみましょう。

株式会社A商事

  • 手元流動性(現預金+有価証券):150億円
  • 有利子負債:50億円
  • 時価総額:500億円

まずはネットキャッシュを求めます。

150億円 - 50億円 = 100億円

上記の通り、ネットキャッシュは100億円であることがわかりました。

次に、時価総額をこのネットキャッシュで割ります。

500億円 ÷ 100億円 = 5倍

こうして算出された「5倍」が株式会社A商事のネットキャッシュ倍率です。

ネットキャッシュ倍率が低い銘柄はお宝株かも?

例えば、ネットキャッシュ倍率が1倍未満になっている場合、それはネットキャッシュの金額が時価総額を上回っているということです。

従って、その企業の株を買い占め、その後に清算させれば、株の買い占めにかかった金額以上の現金を手に入れることができてしまいます

ただし既存の株主もいるため、現実的には株を買い占めて清算させることは簡単ではありません。
ですが、理論的には非常に割安だと判断できるわけです。

ネットキャッシュ倍率が低い銘柄を丁寧に調べれば、割安のまま放置されているお宝株を発見できるかもしれません。

ネットキャッシュ倍率が低い銘柄の注意点

企業が手元にお金を蓄えているということは、裏を返せば「お金をうまく活用できていない」とも考えられます。

もう少し踏み込んだ言い方をすると、「資金活用が下手」「資金の投下先がない=成長戦略がない」といった具合です。

なので割安であっても、いっこうに株価が見直されない(株価が上昇しない)、いわゆる「万年割安株」の可能性があるので注意が必要です。

ネットキャッシュ倍率の低い銘柄に投資した場合、忍耐強く株価の上昇を待ち続けることになるかもしれません。

キャッシュリッチ企業は物言う株主のターゲットになる可能性も

ネットキャッシュが潤沢にあったり、ネットキャッシュ倍率が低い企業は「キャッシュリッチ企業」と呼ばれます。
「金持ち企業」という意味ですね。

キャッシュリッチ企業は株価が割安だったり、手元の現金をうまく活用できていないことから、物言う株主(アクティビスト)のターゲットになる可能性があります

日本で物言う株主と言えば村上世彰氏を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

物言う株主は、一定数以上の株式を保有した上で、企業に対して増配や自社株買いなどの株主還元策を求めたり、経営や事業の方針、戦略などについて変更や改善をするよう迫ります。

企業は脅威を感じるかもしれませんが、企業価値を高めようとする彼らの行為は個人投資家にとって決して悪いことではなく、むしろ増配や株価上昇などの恩恵を受けるチャンスと言えます。

四季報を使って「ネットキャッシュ」と「ネットキャッシュ倍率」を調べる方法

四季報があればネットキャッシュとネットキャッシュ倍率を簡単に調べることができます。

四季報でネットキャッシュを調べる方法

繰り返しになりますが、ネットキャッシュは

(現預金 + 有価証券) - 有利子負債

で求められます。

ではまず「現預金+有価証券」を確認しましょう。

SBI証券の四季報ページをもとに説明します。

調べたい銘柄ページの「四季報 > 財務状況」の【キャッシュフロー】欄に「現金等」という項目があります。

ここの数字が、企業が保有する現預金および換金性の高い有価証券の合計金額です。

下図はファーストリテイリングの数字です。

ファーストリテイリングの「現金等」(SBI証券の四季報ページより)

出典・引用元:SBI証券 > ファーストリテイリング > 東洋経済 会社四季報ページ(2020年4集秋号データ)

次に「有利子負債」を確認します。

【財務】欄にある「有利子負債」の数字がそれです。

ファーストリテイリングの「有利子負債」(SBI証券の四季報ページより)

出典・引用元:SBI証券 > ファーストリテイリング > 東洋経済 会社四季報ページ(2020年4集秋号データ)

あとは、この「現金等」から「有利子負債」を差し引けばネットキャッシュが算出されます。

四季報では項目によって単位が「億円」だったり「百万円」だったりするので計算する際は気をつけてください。

実際に計算した会社四季報2020年秋号時点のファーストリテイリングのネットキャッシュは以下の通りとなります。

7156億96百万円(ネットキャッシュ) =
1兆865億円 - 3,708億4百万円

ここで覚えておきたい注意点があります。

ココに注意

定期預金や公社債投資信託のように価格変動リスクが小さいものであっても、取得日から満期日(または償還日)までの期間が3か月を超える場合は四季報の「現金等」に含まれません
なので、厳密なネットキャッシュを調べるためには、四季報の「現金等」には含まれていない「1年以内に換金できる有価証券」がほかにないか、財務諸表を確認する必要があります。
とは言え、そこまですると手間や時間がかかって大変です。大金を投じないのであれば、上記の内容が頭の片隅にあるだけで十分だと思います。
よいすけ

四季報でネットキャッシュ倍率を調べる方法

あらためてネットキャッシュ倍率の計算式を確認してみましょう。

ネットキャッシュ倍率 = 時価総額 ÷ ネットキャッシュ

「ネットキャッシュ」は先ほど調べた通りですね。

時価総額」は【株式】欄に記載されています。

【株式】欄に記載の発行済み株式数と株価を掛け算すれば、現時点のより正確な時価総額がわかります。

ファーストリテイリングの「時価総額」(SBI証券の四季報ページより)

出典:SBI証券 > ファーストリテイリング > 東洋経済 会社四季報ページ(2020年4集秋号データ)より

あとは、この「時価総額」を「ネットキャッシュ」で割ればネットキャッシュ倍率が算出されます。

まとめ

最後に記事の内容をおさらいしましょう。

ネットキャッシュとは
企業が保有する「現預金」と「1年以内に換金できる有価証券」の合計から「有利子負債」を差し引いた実質的な手元資金のこと。

ネットキャッシュの計算式

ネットキャッシュ=(現預金+有価証券)-有利子負債

ネットキャッシュ倍率とは
時価総額をネットキャッシュで割ることで求められる指標のこと。
(=ネットキャッシュに対する時価総額の比率)

ネットキャッシュ倍率の計算式

ネットキャッシュ倍率 = 時価総額 ÷ ネットキャッシュ

キャッシュリッチ企業は物言う株主のターゲットになる可能性も

「ネットキャッシュ」と「ネットキャッシュ倍率」は四季報で調べられる

よいすけ
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事が皆様の投資のお役に立てば幸いです。
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