この記事では上場企業の営業利益率について、その平均値や業種別ランキングを紹介しています。
また、後半では中小企業との比較も掲載しているので参考にしてください。

日本株をはじめ、いろんな投資商品に少額投資しております。
今回は「上場企業の営業利益率」についてです。
その目安や平均値を知ったり、ランキングを見て儲かる業種・儲からない業種がわかれば投資に活かせることでしょう。
どうぞ最後までお付き合いください。
目次
【予備知識】営業利益とは?営業利益率とは?
まずは予備知識として「営業利益」と「営業利益率」について簡単に触れておきます。
営業利益とは?
営業利益とは企業が本業で稼いだ利益のことです。
売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益」から、さらに「販管費(販売費及び一般管理費)」を差し引くことで求められます。
計算式で表すと次のようになります。
「売上原価」は仕入れ値や材料費など、売れた商品に直接かかった費用のことです。
対して「販管費(販売費および一般管理費)」は商品やサービスを売るために間接的にかかった費用のことで、販売や管理業務に携わった従業員の人件費や広告宣伝費、家賃、水道光熱費などが含まれます。
企業の利益の種類には営業利益のほかに「経常利益」や「純利益」があります。
営業利益率とは?
営業利益率とは売上高に対する営業利益の割合のことで、「売上高営業利益率」とも呼びます。
売上高のうち何パーセントが営業利益として残ったかを表します。
計算式は次のようになります。
最後に100を掛けてパーセンテージにします。
営業利益率は企業の収益性を示しており、数値が高いほど効率よく稼いでいると言えます。
上場企業の営業利益率の平均値
予備知識の確認ができたので、次は上場企業の営業利益率の平均値を一覧で見てみましょう。
日本取引所グループが公表している決算短信集計結果をもとにして、業種別の営業利益率を表にまとめました。
今回取り上げるのは2018年度および2017年度の本決算数値です。
新型コロナウイルス感染症の流行による影響や反動を受ける2019年度以降はイレギュラーなデータである可能性があるため利用を避けました。
対象企業は2019年3月末時点の旧東証一部・二部・マザーズ・JASDAQ上場企業です(一部対象外あり)。
日本取引所グループ > 決算短信集計結果
営業利益率の部分について、上位5業種は薄いオレンジを、下位5業種は薄いブルーを塗っています。
上場企業の営業利益率(単位:%) | ||
---|---|---|
業種 | 2018年度 | 2017年度 |
水産・農林業 | 2.98 | 3.26 |
鉱業 | 32.32 | 26.67 |
建設業 | 6.4 | 7.18 |
食料品 | 7.28 | 7.59 |
繊維製品 | 5.37 | 6.39 |
パルプ・紙 | 3.97 | 3.22 |
化学 | 9.51 | 10 |
医薬品 | 13.32 | 13.88 |
石油・石炭製品 | 4.37 | 4.82 |
ゴム製品 | 9.04 | 9.82 |
ガラス・土石製品 | 9.54 | 9.05 |
鉄鋼 | 4.61 | 5.32 |
非鉄金属 | 3.88 | 5.08 |
金属製品 | 4.73 | 6.04 |
機械 | 9.12 | 8.45 |
電気機器 | 7.63 | 7.08 |
輸送用機器 | 5.67 | 6.67 |
精密機器 | 8.43 | 8.95 |
その他製品 | 7.41 | 6.96 |
電気・ガス業 | 4.67 | 5.54 |
陸運業 | 10.88 | 10.66 |
海運業 | 1.13 | 1.54 |
空運業 | 9.45 | 9.96 |
倉庫・運輸関連業 | 4.66 | 4.47 |
情報・通信業 | 15.78 | 13.76 |
卸売業 | 1.83 | 2.03 |
小売業 | 4.31 | 4.46 |
不動産業 | 12.83 | 13 |
サービス業 | 5.41 | 5.43 |
証券、商品先物取引業 | 36.23 | 48.33 |
その他金融業 | 9.79 | 10.32 |
全産業 | 6.72 | 6.92 |
出所:日本取引所グループ > 決算短信集計結果
銀行は営業利益ではなく「業務純益」
銀行特有の経営指標に「業務純益」と呼ばれるものがあります。これは一般企業の営業利益にあたり、銀行が融資などの本業で得た利益のことです。
この業務純益を使い、営業利益率に相当するものとして「業務純益率」を求めてみました。
以下は3メガバンクグループの2019年3月期における業務純益率です。
ご参考までに。
3メガバンクグループの業務純益率
- 三菱UFJFG:16.1%
- 三井住友FG:20.8%
- みずほFG:16.6%
- 合計:17.9%
このままでは上位・下位がわかりづらいので、次は営業利益率の高い順に並べ替えてみましょう。

営業利益率の業種別ランキング
では、先ほどの表を営業利益率の高い順に並べ替えてランキングにしてみましょう。
順位は似ているので2018年度のみ並べ替え、2017年については省略します。
業種別営業利益率ランキング(2018年度) | ||
---|---|---|
順位 | 業種 | 営業利益率 (%) |
1 | 証券、商品先物取引業 | 36.23 |
2 | 鉱業 | 32.32 |
3 | 情報・通信業 | 15.78 |
4 | 医薬品 | 13.32 |
5 | 不動産業 | 12.83 |
6 | 陸運業 | 10.88 |
7 | その他金融業 | 9.79 |
8 | ガラス・土石製品 | 9.54 |
9 | 化学 | 9.51 |
10 | 空運業 | 9.45 |
11 | 機械 | 9.12 |
12 | ゴム製品 | 9.04 |
13 | 精密機器 | 8.43 |
14 | 電気機器 | 7.63 |
15 | その他製品 | 7.41 |
16 | 食料品 | 7.28 |
17 | 建設業 | 6.4 |
18 | 輸送用機器 | 5.67 |
19 | サービス業 | 5.41 |
20 | 繊維製品 | 5.37 |
21 | 金属製品 | 4.73 |
22 | 電気・ガス業 | 4.67 |
23 | 倉庫・運輸関連業 | 4.66 |
24 | 鉄鋼 | 4.61 |
25 | 石油・石炭製品 | 4.37 |
26 | 小売業 | 4.31 |
27 | パルプ・紙 | 3.97 |
28 | 非鉄金属 | 3.88 |
29 | 水産・農林業 | 2.98 |
30 | 卸売業 | 1.83 |
31 | 海運業 | 1.13 |
- | 全産業 | 6.72 |
出所:日本取引所グループ > 決算短信集計結果
一口に上場企業と言っても、その営業利益率には随分と差があることがわかります。

鉱業の営業利益率が高い理由
2018年度において上場していた鉱業の企業数は6社です。この6社それぞれの営業利益を合計すると約4,922億円になるのですが、このうちの9割以上を国際石油開発帝石(現INPEX)のそれが占めています。そして、その国際石油開発帝石の営業利益率が約49%もあるため、鉱業全体としての営業利益率も高くなっています。なお、同社の営業利益率は2018年度だけでなく、他年度においても高い水準にあります。
上場企業と中小企業の営業利益率の比較
次は上場企業と中小企業の営業利益率を比べてみましょう。
中小企業の数値は中小企業庁が集計・公表している「令和元年中小企業実態基本調査報告書」より抽出しました。
上場企業と中小企業の営業利益率の比較 (2018年度)(単位:%) |
||
---|---|---|
業種 | 上場企業 | 中小企業 |
水産・農林業 | 2.98 | - |
鉱業 | 32.32 | - |
建設業 | 6.4 | 4.37 |
食料品 | 7.28 | 1.82 |
繊維製品 | 5.37 | 1.74 |
パルプ・紙 | 3.97 | 2.09 |
化学 | 9.51 | 5.73 |
医薬品 | 13.32 | - |
石油・石炭製品 | 4.37 | 4.15 |
ゴム製品 | 9.04 | 4.35 |
ガラス・土石製品 | 9.54 | 3.54 |
鉄鋼 | 4.61 | 3.09 |
非鉄金属 | 3.88 | 3.26 |
金属製品 | 4.73 | 4.76 |
機械 | 9.12 | - |
電気機器 | 7.63 | 3.95 |
輸送用機器 | 5.67 | 2.89 |
精密機器 | 8.43 | - |
その他製品 | 7.41 | 3.18 |
電気・ガス業 | 4.67 | - |
陸運業 | 10.88 | 2.07 |
海運業 | 1.13 | 0.1 |
空運業 | 9.45 | - |
倉庫・運輸関連業 | 4.66 | 3.93 |
情報・通信業 | 15.78 | 4.91 |
卸売業 | 1.83 | 1.66 |
小売業 | 4.31 | 0.85 |
不動産業 | 12.83 | 8.7 |
サービス業 | 5.41 | 3.29 |
証券、商品先物取引業 | 36.23 | - |
その他金融業 | 9.79 | - |
全産業 | 6.72 | 3.02 |
比較すると、全体的に中小企業の営業利益率のほうが低いことがわかります。
これは上場企業のほうが効率よくビジネスができているという一面もあるでしょうが、次のようなことも影響していると思われます。
中小企業の営業利益率が低い理由
上場企業は自らの利益を最大化し、それを配当として株主に還元したり、株価を上昇させることを求められます。一方で中小企業の場合は、その多くが自社の発行済み株式のほとんどを経営者や身内だけで保有しているので、外部株主のために利益を追求する必要がありません。
むしろ、自分たちの利益を最大化するために役員報酬や経費をうまくコントロールし、あえて利益を圧縮することがあります。
なぜなら、利益が少なければ税金が安くなるからです(いわゆる節税)。
こうしたことが中小企業の利益率の低さに繋がっている可能性があるため、統計が必ずしも実態を表しているとは限りません。
おわりに
今回は上場企業の営業利益率について紹介しました。
記事の前半で説明したように、その数値が高い企業ほど効率よく稼げています。
営業利益率は言わば企業の「稼ぐ力」を示すものです。
したがって、株式投資をするうえでも見逃せません。
ただし、投資をしようとする企業の営業利益率が高いか低いかは1社単独の数値で判断するのではなく、業種平均や同業他社と比較したうえで判断することが重要です。
私は投資候補について手っ取り早く調べたいときには次のような目安を使っています。あくまでも個人的な目安です。

営業利益率の目安
- 10%~:優良
- 5%~10%:普通
- ~5%:要注意

今回、いろんな業種名が出てきましたが、外国株では日本株と違う基準で業種が分類されています。以下の記事で解説しておりますので、よろしければお読みください。
では、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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